2009年11月30日月曜日

□本の紹介

『折形デザイン研究所の新包結図説』
予価=2,400円+税
発売/11月7日
ラトルズ刊

伊勢貞丈の包結図説の復刻版が出たときには
すぐに求めました。現代語訳集があり、その解題に
「この包結記から 受けづぐべきことは、貞丈(江戸
時代中期の人)が 室町時代に行われていた故事を
引き継ぎ、今そこ にいる人々にとって役立つように
したいと願ったその志あろう」というようなことが書か
れています。

2009年、「新包結図説」が出版されるとお聞きした
時、この言葉を思い出し、「新」という字がついたこと
にとても感動しました。このことは、とても大きな意味
を持っています。 またこの本の出版時期に折形教室
へ通うことができ、様々な結びにまつわるお話を聞けた
ことは、私にとって大変幸運なことでした。

折形教室では昔の包み方と、新たにデザインされた
包みを教えていただいています。今の私たちが使い
やすく、また住空間を考えたものですが、昔からの
儀礼を大切にした美しい包みです。
実際に使ってみますと、和紙の色や質感がなんとも
心地よく、半紙と水引は必需品になりました。

包む時間は結びと同様、心が鎮まります。

□折形デザイン研究所の本
 http://origata.com/shop/14.php

折形デザイン研究所の本はどれも美しく、情報量も多い
素敵なものばかりです。ぜひご覧ください。

今回この本の「むすびの精神史」 折口信夫の「むすび」論
の中で、2007年に制作した「薬玉」の写真を載せていただき
ました。(カテゴリー「イベント」の中で写真紹介しています)

薬玉制作にあたりましては、京都「結望会」主宰の
西村望代子先生に古い文献を見せていただき、結びにつき
ましてもご指導頂きました。

□折形デザイン研究所の新包結図説・展

日時/2009年11月7日(土)→12月6日(日)
会場/十和田市現代美術館企画展示室
     
http://www.city.towada.lg.jp/artstowada/

とても開放的な建物で、入口や中庭など、随所に作品が展示されています。
きれいな通りに面したおしゃれな美術館です。

この会場で、2007年制作 「薬玉」の写真を展示していただきました。
また、今回の展覧会開催に伴い、折形研究所の本が 出版され、「むすび」
の項に「薬玉」の 写真を載せていただきました。

◇写真 :「薬玉」  2007年10月 カフェギャラリー 楽庵での展示風景   


□総角結び

毛利邸 〜鎧兜と壺装束の着装体験〜

秋のこの時期恒例のイベントで、日・祝日のみ無料で着装できます。
(お子さんのみ¥1000だそうです)
秋晴れの一日、たくさんの方がこのイベントを楽しんでいらっしゃい
ました。 小さいお子さんの鎧姿がとてもかわいらしく、思わずシャッター
を押しました。



背中の総角結びは背後を守る護符、お守りです。


そして女性は市女笠をかぶり、平安時代の上流婦人の旅姿に。



旅をするときは顔を隠したんですね。
笠の周囲に薄い布帛(ふはく)をとじ付けて垂らし、
赤い紐でやはり総角結びが結ばれています。
本来は白い紐を使ったようです。


これは飾りであり、風を受けた時に開くのを防ぐ役割もあるようですが、
結びの霊力が信じられていた時代なので、やはり「魔よけの護符」として
の意味が強かったそうです。(日本の結び:額田巌著より)


市女笠は、最初は市に物売りに出る女性がかぶったところからこの名
がついた そうです。頂部に巾子(こじ)という高い突起のある笠の形は
とてもきれいでした。

2009年10月19日月曜日

毛利邸 書と結び展 ~毛利邸に包まれて~

結び目には神が宿るといわれますが、毛利邸には14代目当主の
心が 宿っているようでした。
働く人々は、ここで働くのが幸せだと言い、朝からお掃除、
お花 の手入れをそれは楽しそうに行います。
「門を開けま〜す」という元気な声が響き、どこかでまだ当主が
生活しているような一日の始まりです。
期間中、毎朝清々しい、幸せな気持ちで過ごしました。


ここではお茶とお菓子を頂けます。
(下関の老舗菓子店、
松琴堂のお菓子雪ごろもを頂きました)

22あった部屋は現在14部屋になり、5つの床の間があります。
坂本さんの書に、さりげない野の花が飾られていきます。
山から花を持ってくるそうですが、道端で見つけたお花を
使うこともあるそうです。夜露に一晩あててから使うそうです。

そんな毛利邸の自然な花々に魅せられた人々が「今こんな花が
咲いてますよ」わざわざと知らせてくれるそうです。
「道を歩いていても、花から呼ばれるように求めていた花に
出合うんですよ、不思議なのですが」と館長さんは嬉しそうに
お話してくれました。



毛利邸の建物にはヨーロッパに留学し、建築に興味をいだいたという
当主のこだわりが随所に見られます。
天井が高く、窓ガラスはドイツから取り寄せたものだそうです。
各部屋の欄間は自然の風をやさしく通し、1日中大勢の観光客が
訪れるにも関わらず疲れないのは、この風の流れのせいかなと思いました。
毎日の建物散歩は朝の楽しみとなりました。


明治天皇ご宿泊の間


大広間は書と結びでハレの日の室礼に。

様々な結びが飾られると、花の色は
おさえられ書と結びを引き立てて
くれます。「合わないところがあったら
言ってくださいね。」
とおっしゃるのですが、
一つもありませんでした。







文字にも結びにも、太古の生活を物語る痕跡があるといわれます。
私たちは毎日のように2人でテーマについて話しました。
無縁に見える2つの世界が、重陽というお節供を通して繋がって
行く過程は とても刺激的で、楽しい時間でした。

坂本さんは実はとても古い友人なのですが、しばらくは疎遠でした。
彼女は時折「私たちは新しい友達」といいます。

お互いこの年になってわかったこと、この年まで続けてきたこと
があって、それがこのような形で発信でき、新しい友達になれた
としたら、こんなに嬉しいことはありません。

書と結びの出合いを毛利邸の建物や、そこで働く人々が温かく
迎えてくれ、少しづつ形になっていく過程はとても有意義な
時間でした。 想像以上の実りに恵まれて、2人にとって思い出
深い作品展となりました。




坂本杏苑ホームページ
毛利邸の写真など
デザイナーMさん
施設案内