2011年8月17日水曜日

長府毛利邸 -七夕の室礼ー その2

毛利邸の魅力は、美しい庭と建物、そして各お部屋に飾られる花々です。









初日朝、サーと雨が降りました。止んでよかった、と思っていたところに
館長さんが、「雨が降ると杉苔の緑がきれいなんですよ。」と話してくれました。
「雨が降ると杉苔が・・・」
当たり前のようにお話されるのですが、そんなこと感じることのない生活に
ため息が出ました。


雨は昔からありがたいものでした。「恵み」ということをすっかり忘れていました。


雨上がりのお庭




お庭は大切に手入れされています




近くの方が持ってきてくださった、見事なハスの花



大広間の裏は廊下になっています。
この空間に、坂本杏苑の墨象と、糸巻きの明かりを入れました。
LEDの「ゆら」はうろうそくのように灯が揺れます。(中国製・東急ハンズで購入)




奥に坂本杏苑の墨象と、彼女と東京でコラボした画家の作品
床の間にも美しくなじんでいます。
お花もコラボ、です。




朝毛利邸に着くと、中庭にたくさんのお花がお水にさされています。
一晩夜露にあてておくそうです。
毎日夕刻にはお花を下げ、朝にまた新しいお花も加えていけなおす。
大変だなあ、と思いつつ、やはりこういう豊かさにあこがれます。


毛利邸には買ったお花がないそうです。
山や野からは勿論、毛利邸にお花を持ってきてくださる方、
こんな花が咲いてますよと知らせてくださる方。
お花の方からやってくるような感じがするそうです。


全てが自然の花でありながら、買いたくても買えないような
立派な花もたくさんあります。


毛利邸での室礼は「書と結び」そして「お花と建物」という
4つの力が働いて、一つの空間を作っています。
お盆を前に毛利公もそっと参加してくれていたような気がする
「七夕の室礼」でした。

長府毛利邸 書と結び二人展 ー七夕の室礼ー その1

2011年8月5日~8日まで
下関市長府毛利邸にて、書家の坂本杏苑と七夕の室礼をいたしました。



長府毛利邸入り口





これは3日目の笹飾り




笹は一日で葉がくるりとなってしまうのが課題でした。毛利邸の裏庭にとても
珍しい「金明竹(きんめいちく)」という、黄色に緑の線の入った竹があり、
「これでよかったらいくらでもお使いください」と館長さんが言ってくださり、解決。
思えば、贅沢なことでした。

結局毎日竹を入れ替え、そのたびにみんなで短冊や五色の糸を掛け替えることに
なりましたが、毎回違う展示になり、これも楽しみとなりました。
毛利邸の皆様、毎日ありがとうございました。



京都のお店に注文した「七夕の紙衣(かみこ)」

紐や花結びだけ自分で取り換えてみました。
真ん中は、京都のお料理屋さんで出していただ
いた 梶の葉を乾燥したものを包んだもの。




今回はなんといっても、この「大短冊」
布に般若心教を書いたものが6枚、そして5枚の布に、5色の結びをそれぞれ
真ん中に。(後ろに、白、黄、赤、緑と続きます)
竹は、やはり毛利邸の金明竹。画びょうも何も使わず、展示できました。
私たちの室礼はいつもこの建物に助けられ、包まれています。




陰陽五行の5色。
結びはなるべく涼やかなものを選びました。





大広間には、前回と同じお節供の掛け軸にハスの花。
違い棚は蝙蝠(かわほり)扇
お仕覆、梶の葉、京の七夕さんなど。





付け書院には坂本杏苑が春日大社で求めた五色の筆
文箱はひいお爺さんが使っていた、秋の七草柄のもの。





毛利邸には14の部屋があります。
大広間を抜け、明治天皇ご宿泊の間を過ぎると、すーっと冷たい風が流れ込みます。
奥のお部屋には天井裏に空調が取り付けられています。
送り火としての行灯は、庭に面した廊下に置くつもりでしたが、明るすぎて、
この奥の間にひっそりと置きました。




坂本杏苑の墨象の行灯に、結びを施しました


七夕のお節供には様々なモチーフが持ち上がりました。
学ぶほどに、昔の人々は「ハレ」と「ケ」を上手に生活に取り込むことで
心の持ちようを自然に身に付けていたように感じます。

毎年の行事が続けられる幸せを、東北の方々の姿から学びました。
規模は小さくなっても、今年も長く伝わる行事の開催に全力を挙げ、
その姿に涙する人々の気持ちに触れて、繰り返し続けていくことの
大切さとその意味を教えられました。

続けてきたからこそ、そこからまた新しい力が生まれるのだなあ、と
あらためて年中行事の大切さを感じさせられた年となりました。