結びついたといわれています。
折口信夫はひな祭りを「古代の禊ぎの名残」とし、古代生活の名残を留めるが
故にこれらの「しきたり」には「やすらひ」を感じるのだろうといっています。
しかし民俗学者の吉野弘子さんは、ひな人形を蛇の脱皮を模したものと考え
蛇の脱皮に子供の成長を託して祈った風習がひな祭りに発展したとし、そこに
罪の意識などなかった、としています。
いずれにしても、再生を願うものであることは確かで、古くから磯遊び、浜降りなどと
言われる風習は全国各地に残っていて、この日は古くから水に関する行事が行われていました。
貝桶の結び(伊勢貞丈「包結記」より) |
貝を食べるのは磯遊びの名残と言われますが、誰もがひな人形を飾ってお祝いする
ようになったのは江戸時代半ばを過ぎてからの事でした。
そして、婚礼道具の一つとして大切にされていた貝桶の結び方は、江戸時代の包み
結びの本に詳しく書かれています。
上の写真の赤い紐は「とんぼ結び」で左が雄、右が雌のとんぼを表しています。
そして緑の紐も同様に貝桶の結びですが、これは「うろこ結び」と言われやはり
左右対称に結ばれています。
うろこは水を連想させ、実際その結び目の形も三角形で「水」との関わりを感じさせ
ます。
種々の花結びより「檜扇(ひおうぎ)の結び」 |
上の絵を参考に結んだもの |
もう一つ結びの事で言いますと、女雛が手に持つ檜扇に付いた結びがあります。
これは6色の色や紐の長さが決まっていて、にな結びを絡ませながら結びます。
思いのほか長い飾りで、実際には扇はたたんでこの紐をぐるぐると巻きつけ
15センチくらい垂らして手に持ちます。
原久美子さん制作の貝雛と魔よけの赤い紐 |
何気なく見ていると気が付きませんが、お節供の飾りには思いのほか結びが
使われ美しいわき役をつとめています。
雛段を飾るのが難しくなってきましたので、このような貝雛や、お雛様にまつわる
結びなどに思いを託すことも一つの方法かなと思います。
ちなみに島根県では男の子も3月3日にお人形を贈るそうです。長男には座った
お人形。これは家を継ぐというところから。次男は独り立ちしてほしいという願いを
込め、立ったお人形。
長男用のおひなさま |
次男への贈り物 |
7歳までは神の子と言われた江戸時代。結びは通過儀礼の中で象徴的に使われることがよくみられ、子供への思いは様々な形となって残されています。
それらを紐解きながら思いを結ぶ結びを考えていくのは楽しい作業です。
それぞれの時代に名もない人々によって伝承されてきた結び。お節供はそんな結び
の事を思い出させてくれます。