Himmeli(ヒンメリ)の語源はスウェーデン語で「天」を表す
そうです。1150年という遠い昔から冬至祭ヨウルの装飾品
として、主にライ麦の藁で作られていました。
そこには穀物の精霊が宿り災いを避けるといわれ、食卓の
上の天井に吊るして光を求めたといいます。
ヒンメリを独学で研究し、そこからさらに進化して“麦わら
彫刻”という新しい世界をみつけ、制作活動を続けている、
おおくぼともこさん。
先日、おおくぼさんのアトリエで結びのワークショップを開
かせて頂きました。
葉山を中心に活動されている様々な分野の方々が参加し
て下さり、結びのお話一つ一つにご自分の経験や興味の
あることとの共通点などへ次から次へとお話が広がり、と
ても楽しい時間でした。新しい結びの世界への一歩を踏
み出せたように感じています。
外の風が気持ちの良いアトリエ。
左上にヒンメリがみえます。
おおくぼさんと私のご縁はまさに「結び」でした。
折形デザイン研究所の折形を学んだ後に、結びの講座へ
参加してくださって、私はヒンメリというものを初めて知りま
した。
ヒンメリの起源を追及されたおおくぼさんは日本の藁の文
化との類似性をみつけます。
日本でこの時期の藁の造形物といえば「しめ縄」。
どちらも結びの力を信じた人々が作り伝えてきた造形物
として、同様の役割をもっていると考えたのです。
清浄な地と不浄な地を分け、神様を迎える神聖な場を
しめす注連縄はもともと一筋の縄でした。しかし注連縄は
結ばれ、地方色豊かな形を生み出します。
結びは結界として、穢れから人々を守る呪力を持つもの
と考えられていました。魂を結びとめ、思いを結ぶ。
注連縄はさらなる力を求めて結ばれていったのでしょう。
結びを単なる留めの技としてとらえるのではなく、ヒンメリ
の美しさや祈りが「結ぶ」ことによって完成する、という感
覚は、実際に手で作業をする時間から生まれたのでは
ないかと、結んでいる時に感じる安心感のようなものか
らそのように思います。
結びのことをヒンメリの講座でお話してくださったことか
らこのワークショップが実現しました。素直に嬉しく、
ありがたく思います。
アトリエで見せて頂いた「藁の文化」という本。
冬の厳しい北欧と災害の多い日本。
「ワラ」という大切な主食である麦や米の副産物から、人々
は生活用具だけでなく、日々自然と向き合って暮らしていく
ための知恵としてヒンメリやしめ縄をつくり、また作る喜びを
感じたことでしょう。
日暮れの早いこの時期には特に、北欧の人々が太陽を、
闇に光を求めた気持ちを感じることができます。
この日のワークショップは誰でも一度は結んだことがある
「ひと結び」を人々がどのように使い、さらに別の結びへ
発展していったかなど体験して頂きました。
昔は女学校でも結びを教えていて、結びのひな型をきちん
と作っていたようですので、それに倣って今回は結びの
ひな型を皆さまに作っていただきました。
「ひと結び」からできる結び3種
決まりはないのですが、今回はこのようなかたちに。
心覚えとして時折思い出していただければと思います。
ランチは“
草舟 on Earth”の「
草弁当」
出汁も含めて動物性のものは使わないという、草文化探求
家の方が作ってくださいました。とても美味しく楽しいお弁
当です。
|
草弁当
左上はお麩で作ったもの。
|
草弁当にはツユクサを使ったお料理がありました。
はるか昔には「草むすび」という伝達のための結びが
あり、またまた日本人の自然観に会話が弾みました。
葉山という街の魅力はこの自然に恵まれた土地への住ま
い方をそれぞれしっかりと持てるということなのかな、とこ
の街の心地よい風が忘れられないワークショップとなり
ました。