2014年9月4日木曜日

川越氷川神社 「縁むすび風鈴」と「まもり結び」

毎月一回、結びのお稽古で氷川神社を訪れます。
いつ行っても大きな鳥居の向こうには本殿とご神木の深い緑が美しく、
ほっとした気持ちにさせられます。



8月いっぱい飾られていた「縁むすび風鈴」
およそ一万枚の短冊はお祓いのうえ、お焚き上げされました。
大勢の方が参拝に見えたそうです。

川越氷川神社
https://www.facebook.com/hikawa.kawagoe

そして、むすびCaféでは一年分のまもり結びが飾られています。

今年家庭画報、新年号で紹介されました「まもり結び」が
今月、家庭画報の英語版「KATEIGAHO INTERNATIONAL」
でも紹介されたとのこと。
正直、英語版のことは知りませんでしたが、本屋さんでは日本語の
家庭画報近くの棚にありました。



日本のさまざまな文化がとてもきれいな写真で紹介されています。
日本を紹介する英語の勉強にはとても役立ちそうな雑誌です。

2014年8月26日火曜日

伊勢神宮の相生結び

今年初めて伊勢神宮へお参りに行きました。

ウィーン交響楽団で33年間首席チェロリストを務めた
吉田健太郎さんの奉納コンサートに同行することができ
参加者は正装での特別参拝ということで、初めての
参拝は厳かに始まりました。

友人の同級生でもある吉田さんの演奏は能楽堂で
行われ、その柔らかく美しい音色が神宮の森に優しく響き
とても清々しいひと時を過ごしました。

伊勢神宮 内宮にて


























神宮の結びは、相生結びでした。
この結びは祇園祭の鉾飾りにも多くみられます。
しかし、水引の相生結びはこれとは違いますし、
江戸時代の本にある相生結びも形は違います。

同様に初めて参拝した京都の下賀茂神社
ここでは相生の社が。





















お能の「高砂」では「相生の松」の言い伝えが謡われ、
長寿や老夫婦の睦まじさを称えます。

水引の結びでは、やはりおめでたい結びとして
相生結びには真・行・草の三種類があります。

実用的な相生結び。
伊勢神宮での厳かな相生結び
そして、おめでたい包みを結ぶ、相生結び

相生の松は永遠に尽きない和歌の道を表して
いるといわれます。
伊勢神宮の遷宮も、いろいろな説があるようですが
遷宮を行える社会の継続を願ったものという解釈も
あるようです。

神社はいつの時代も、社会の平穏を願い、災害の多い
国の知恵として生まれてきたように思います。

そして結びも人々の願いに静かに寄り添ってきました。


2014年3月3日月曜日

上巳の節供

桃の節句の起源は中国の水の精霊に対する祭りで、それに日本の祓の信仰が
結びついたといわれています。

折口信夫はひな祭りを「古代の禊ぎの名残」とし、古代生活の名残を留めるが
故にこれらの「しきたり」には「やすらひ」を感じるのだろうといっています。
しかし民俗学者の吉野弘子さんは、ひな人形を蛇の脱皮を模したものと考え
蛇の脱皮に子供の成長を託して祈った風習がひな祭りに発展したとし、そこに
罪の意識などなかった、としています。

いずれにしても、再生を願うものであることは確かで、古くから磯遊び、浜降りなどと
言われる風習は全国各地に残っていて、この日は古くから水に関する行事が行われていました。


貝桶の結び(伊勢貞丈「包結記」より)

貝を食べるのは磯遊びの名残と言われますが、誰もがひな人形を飾ってお祝いする
ようになったのは江戸時代半ばを過ぎてからの事でした。
そして、婚礼道具の一つとして大切にされていた貝桶の結び方は、江戸時代の包み
結びの本に詳しく書かれています。

上の写真の赤い紐は「とんぼ結び」で左が雄、右が雌のとんぼを表しています。
そして緑の紐も同様に貝桶の結びですが、これは「うろこ結び」と言われやはり
左右対称に結ばれています。
うろこは水を連想させ、実際その結び目の形も三角形で「水」との関わりを感じさせ
ます。

種々の花結びより「檜扇(ひおうぎ)の結び」
上の絵を参考に結んだもの

もう一つ結びの事で言いますと、女雛が手に持つ檜扇に付いた結びがあります。
これは6色の色や紐の長さが決まっていて、にな結びを絡ませながら結びます。
思いのほか長い飾りで、実際には扇はたたんでこの紐をぐるぐると巻きつけ
15センチくらい垂らして手に持ちます。


原久美子さん制作の貝雛と魔よけの赤い紐


何気なく見ていると気が付きませんが、お節供の飾りには思いのほか結びが
使われ美しいわき役をつとめています。
雛段を飾るのが難しくなってきましたので、このような貝雛や、お雛様にまつわる
結びなどに思いを託すことも一つの方法かなと思います。

ちなみに島根県では男の子も3月3日にお人形を贈るそうです。長男には座った
お人形。これは家を継ぐというところから。次男は独り立ちしてほしいという願いを
込め、立ったお人形。

長男用のおひなさま
次男への贈り物

7歳までは神の子と言われた江戸時代。結びは通過儀礼の中で象徴的に使われることがよくみられ、子供への思いは様々な形となって残されています。
それらを紐解きながら思いを結ぶ結びを考えていくのは楽しい作業です。
それぞれの時代に名もない人々によって伝承されてきた結び。お節供はそんな結び
の事を思い出させてくれます。



2013年5月25日土曜日

訶梨勒(かりろく)の結び

銀座和光での築城則子さんの染織展は連日盛況で、
トークショウには120名の方がいらっしゃいました。
皆さんと一緒に会場を歩きながらお話を聞くという、
楽しいひと時でした。

訶梨勒は窓辺に立てられた7本の柱に掛けて頂きました。

訶梨勒の写真












今回の訶梨勒は、折りと結びでお香の包みを作りました。
この包みのデザインは折形デザイン研究所のものです。

半紙で折る 折形歳時記」(平凡社)の中に「貝を包む」というテーマで
貝殻を原料とした胡粉が片面に塗布された半紙を使ったひし形の繊細な
包みが載っています。今回の包みはこのバリエーションです。
(折形デザイン研究所に使用の許可を頂きました)


片身替りの生地で折った包み











訶梨勒は慶事の床の席に飾られる香袋で、室町幕府八代将軍、
足利義政に仕えた同朋衆が記した「御飾り書」に「訶梨勒とて
柱飾りなり」とあり、古くは邪気を祓う具でした。

香席は香りを聞き分ける場所ですから、香りの強い生花を飾ること
は避け、様々な道具を使って季節感を演出します。
その一つに結びかあります。

志野流の志野袋には12か月の花の結びがあります。
訶梨勒の実を象った香袋には5色の紐が優雅に垂れ下がっているものや、
結びを施したものがあり、匂い袋には何かしら結びが施されます。







)








この絵の結びは、訶梨勒の結びとして有名なもので
あわび結びを基本にしています。

香木はとても貴重なものでしたので、大切に扱われました。
悪月といわれる5月のお節供に掛けられた薬玉は、9月9日の重陽の節供に
茱萸袋と取り替えるまで飾られていたそうです。

小倉織の新しい訶梨勒には、慶事に使われるあわび結びと
護符としての役目を持つ総角結び(あげまき)を基本にした結びで
ゆったりと紐が垂れるようにデザインしました。

再生された小倉織のように、再生への思いをしっかりもって制作をつづけたい
と思います。


2013年4月8日月曜日

川越氷川神社とのご縁 ‐その2‐

最初のご縁は、氷川会館ロビーに飾る結びのパネルの制作でした。
五節句にちなんだ結びの作品五点に、ロビー受付横の「吉祥の結び」
神前結婚の控えの間の「求婚 許婚の結び」を加えた計七点は
昔からある結びをそれぞれのテーマごとに作品として仕上げたものです。
折形デザイン研究所で撮影、編集が行われ、氷川会館に飾られています。


 












 

結びの栞はパネル設置後しばらくして作ってくださいました。
表裏八面に写真と説明が入っています。興味を持ってくださる方が
いらして、写真を撮ったり、文章を写したりと、、。
そこで栞を作ってご希望の方へ差し上げているそうです。
















 



「吉祥の結び」は昔から「吉の結び」として使われてきた結びを
「陰陽」という考えのもとにデザインしたものです。

求婚許婚の結びは、本居宣長の本に紹介されている香川県の風習や、
台湾の民族に残る求婚の方法に結びを使ったものがあり、そこから
  イメージして考えました。気持ちを伝える結びです。
結婚に至るまでの男女の結びつきを結びで表してみました。


「結び」「産霊」「掬び」と、結びの意味を考えていきますと、さまざまな分野へ
迷い込んでしまいます。作品制作には欠かせないもの。
そしてあたらな世界への入り口となりました。

今年も「まもり結び」の制作の機会を頂きまして、神社とのご縁も続き
嬉しく思っています。毎月ひとつ、その時期に合わせた結びをデザインする
ことになりました。1月は新玉、2月は節分、3月は上巳の節供。

今月四月は川越氷川神社の「柿本人麻呂祭」がテーマに。


 
















和歌の名手、人麻呂のイメージを結びにしたら???
大変です!  (何もうかびませんでした)

和歌‐曲水‐かな‐流れ‐‐‐‐まだまだ勉強が必要です。
さあどのような結びになったのでしょう。


川越氷川神社とのご縁  ‐その1-

昨日7日は川越氷川神社のご縁日に。風は強いものの、雨は上がり、
子供たちが走り回っていました。


 

お囃子、紙芝居、ワークショップ、前髪カット、似顔絵、雑貨、骨董、そして、
コエドビールやバーガーーマニアなど川越出身のオーナーの出店。
そのほかにも、パン屋さん、おいしいお野菜、氷川会館のお料理、
スイーツと、とても楽しくおしゃれで、美味しい、ご縁日です。




川越の街・川越氷川神社にご縁のある方々が出店し、またそのご縁から、
新しいお店が出店するという、街とのつながりを大切になさっている
宮司さんならではの楽しい催しです。


川越氷川神社は「縁結び」で有名な神社です。
ここでは、良縁を育むためのさまざまな結びがそろっています。


 

「結い紐のもと」は結い紐2つ分の長さの水引で結ばれています。
もとになる結びは何がいいか、悩みましたが、「相生結び」をご提案しました。
 この結びは水引では真・行・草があり、これは「真の相生結び」です。
組紐ではよく髪飾り結びなどと言われています。
 
そして、巫女さんたちへ一日結びの講習会を開きました。
宮司さんも参加してくださり、無事皆様この結びを習得されました。
 
もともと神様をお迎えする場所に結びはありました。
赤い水引は神職の方々の手で結ばれ、うっすら中の結びが浮かび上がる
美しい包みにおさめられ、神前におかれ、神聖なものへと姿を変えます。
 この包みが開かれるときは、新しいご縁の始まりです。
 
結納も、結婚も、「結」という字が使われます。
髪を結い、帯を結び、さまざまな結びが新しい門出にはなを添えます。 



2012年5月9日水曜日

結び  ~東北の旅から~

連休は2泊3日で東北に。目的は藤原清衡が残した、中尊寺経の紐。
平清盛が残した厳島神社の平家納経と並ぶ、高度な技術で組まれた紐です。
末法思想の世の中、写経ブームとなり、清衡は経巻用の紐を5000本作りました。

残念ながら、その多くは豊臣秀吉が(勝手に、といわれてます)高山寺に移して
しまったので、わずかしか残っていません。
復元したものと古いもの5本くらい見れました。色も柄も洗練されたものでした。

<中尊寺>
連休中で多くの人が訪れていましたが、杉の木に囲まれた参道の美しさは
想像以上のものでした。
中尊寺の表参道「月見坂」樹齢300~400年の杉並木が続きます。


中尊寺の北方鎮守、白山神社の境内に「白山神社能舞台」はあります。
萱葺き屋根と、素木(しらき)の木目が美しい舞台です。
ここで「御神事能」を観ることができました。

「竹生島」が上演されました。

シテ・ワキ・囃子・狂言という諸役を、中尊寺の僧侶が稽古して
務めるところが特色で、全国で唯一の例だそうです。
日本の文化は地方の歴史の力に支えられていることを感じました。


能装束の紐はシンプルな結びですが、露の結び、胸紐の美しさは
静かな舞の中で、厳かな雰囲気を引き立てます。






















幕の両側に結びがあります。にな結びが結ばれていました。

この結びは、葵祭の斎院の冠の美しい飾りとして
使われています。そのほか調度類にも見られます。

同じ結びが場所と用途によって大きく表情が変わり、またその意味も
興味深いものですが、伝統が受け継がれている場所、神聖な場所では
必ずどこかに結びを見ることができます。

ひっそりと、静かに、絶えることなく・・・。
そんな結びを愛おしく思います。